あらすじ
どんな罪かは分からないけど、生前の罪によって輪廻のサイクルから外されたぼく。
「おめでとうございます!抽選に当たりました!」という天使の出現により、
輪廻のサイクルに戻るチャンスを得てしまった。不本意だけど。
自殺を図った少年、小林真の体にホームステイし、
自分の罪を思い出すことになったのだけど、
小林真って、そんなにいい人生でもない。
父親は利己的な人間、母親は不倫、兄はいじわる。
学校のクラスでもひとりぼっち・・・そんな小林真として過ごすうち、
人の欠点や美点が見えてくるようになってきて・・・。
森絵都(もり えと)さんについて
1968年生まれ。東京都出身。
早稲田大学卒業。
代表作に
『リズム』(第31回講談社児童文学新人賞受賞)
『宇宙のみなしご』(第33回野間児童文芸新人賞、第42回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞受賞)
『アーモンド入りのチョコレートのワルツ』(第20回路傍の石文学賞受賞)
『つきのふね』(第36回野間児童文芸賞受賞)
『DIVE!!』(第52回小学館児童出版文化賞受賞)
『風に舞いあがるビニールシート』(第135回直木賞受賞)
『みかづき』(第12回中央公論文芸賞受賞)
など。他にも多数。
みどころ&チェックポイント(受賞歴など)
受賞歴・映画化情報
・第46回産経児童出版文化賞受賞
2020年にはAmazon Audible版、
2021年には英語翻訳版も発行されています。
2000年に実写映画化。
2010年にはアニメ化、
2018年にはタイで実写映画化。
2022年には「HOMESTAY(ホームステイ)」として、
Amazonオリジナル映画が公開されました。
なにわ男子の長尾謙杜さんが主演です!
感想・心に残った言葉
ホームステイすることになった、小林真の環境は、
天使のプラプラから聞いたとおり最悪でした。
学校ではいじめられ、一人過ごすようになっていた小林真。
利己的で自分の昇進にしか興味がないような父、
フラメンコの講師と不倫する母、
いじわるな高校生の兄。
学校ではなんだかおかしな同級生にからまれ、
気にしていた後輩は、欲しいものがあるからと中年男と付き合っている。
しょせんは他人事と、今までの小林真では
しなかったようなことをしてみるぼく。
クラスメイトとも話すようになり、友達ができる一方、
母親の不倫にいらだってひどいことを言ったり、
後輩の中年男性との付き合いをやめさせようとしたり・・・。
そうして過ごすうちに、人の欠点や美点が見えてきたのです。
黒もあれば白もある。
『カラフル』p179
赤も青も黄色もある。
明るい色も暗い色も。
きれいな色もみにくい色も。
角度次第ではどんな色だって見えてくる。
いじわるなだけだと思っていた兄の気持ち。
利己的なだけだと思っていた父親の、それまでの苦労と母親への感謝。
ほしいもの手に入れるだけのために中年男と付き合っていると思っていた後輩の、
優しさと残酷さでゆれ動き迷う姿。
人は自分でも気づかないところで、だれを救ったり苦しめたりしている。
『カラフル』p187
この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷ってる。
どれがほんとの色だか分からなくて。
どれが自分の色だか分からなくて。
どんな色も、それぞれに見え方が違っていて、
みんな、自分自身でも気づかないたくさんの色を持っている。
良くありたいと思う心も、意地悪で残酷な心も、
自分を責めてしまう心も。
誰かが誰かを何気なく救ったり、傷つけたりしていて、
そんな世界だからこそ、色に満ちあふれている。
249ページとそれほど長くはありません。
軽やかさと読みやすい文章で、
読み終わる時には、小林真と一緒に少し前に進みたくなりました。
主人公が中学生ということもあり、
中高生にも共感できる内容だと思います。
表面だけ見ていても分からない。
どんな人も、どんな人生も、たくさんの色があると感じた1冊でした。